01/30/*20 タブチくん、さよなら。

この本、面白いですよ。
とスペクテイターの青野編集長から渡された"メイベル男爵のバックパック教書"それまで目にしていた登山を始めとした山系の話は家で例えれば表玄関からの真面目な話ばかりで自分らにはフィットが悪かった。脇道や裏口からの山の話はないのかと思っていたから、この本の田渕節はハマりがよかった。シェリダンもいいけど、この訳者の脇道具合に自分たちと同じ岸辺の人っぽいかも と勝手に想像した。訳者の書いた章もありただ訳をする人じゃなさそうで俄然、その共著者の日本人に興味が湧いた。

田渕義雄.....

青野編集長から"バックパック教書"を渡された頃はマウンテンリサーチを始める準備をしていた時期で東京から2時間範囲の山を毎週末探し回っていた。"バックパック教書"以外の田渕さんの著作も一通り読んですっかりファンになった。
2時間以上で遠いけど、田渕さんが暮らす川上村へ行ってみようとカミさんと出掛けたのが2006年

田渕さんの書いている通りいい景色の村だった、まだ見ぬ季節も田渕さんの本ですっかり見たような気になっていたから、この村に決めた。
そして手に入れた土地は周囲2km何も無い山の中一番近い民家がなんと田渕家だった。それから4年、機会があればいつか会えるとこちらから会いに行く事もせずにいたら、ある晴れた日に突然来てくれて、開口一番"お前ら、面白い事してるなぁ"と言ってくれた2010年の秋。

あれからの10年間にミドリ池へスノーシューハイクしたりクロカンスキー履いて遊んだり畑つくりしたり、苗を一緒に買いに行ったりチェーンソウの刃の研ぎ方やロープの結び方教えてもらったりタネを蒔く時期、有機農法がなぜ大事なのかとかプラスティックの見えない景色を作る事とか川上村で暮らすのに必要な情報と要領と秘密を一緒に遊びながら少しづつ教えてもらった。30年以上の実践に裏打ちされた大きな存在だった。

田渕さんの著作"森からの手紙"の巻末にこんな一節がある。

今しばらくここに居ます
小さな焚火に火を起こしたところだから
この寒山の森の片隅に

風はいつかは止むものだけど、止まない風があるとジョンの事を謳った小野洋子さんに倣って思うに田渕さんが起こした小さな焚火の火はきっと燃え続ける、自由を愛する田渕好きソロー好きのみんなの手元で小さく、ずっと。


(小林)

 

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