05/10/'10 4℃

この事件は朝6時ころに始まる。
頭の中のモヤモヤの中で犬がもの凄い吠えかたをしている。何の夢で犬がこんな吠え方をしているのか?違う、現実の方だ、だとするとウチの犬宮(goo)だ。ひっかかる寝袋のファスナーを引き剥がすように開けて外に飛び出し、吠え立てる声のする方角に焦った大声で犬の名前を叫ぶとすぐ下のデッキの足元に宮(goo)は居た。なんだウチの犬じゃないんだと大声を出した分すこし間が悪かったけど安心した。しかし、吠える声は森の中から一層大きく聞こえてくる。

宮(goo)を繋いでバイクで声のする方に行ってみると畑の鹿除けのフェンス沿いで2匹の野犬(首輪がないので)が追い立てて弱らせた鹿を正にフェンスの角まで追い込んだところだった。近くに寄って行っても2匹の野犬はこちらに一瞥をしただけで旨く連携を取って鹿が逃げないようにしている。鹿はオシリと鼻先を執拗に噛み付かれて血まみれ。GW中に子鹿が近くで死んでいたけどこいつらの仕業だったのか....。

野犬たちの執念深さと執拗さを改めて思い知る。2匹の犬たちはこちらとの目を合わせた時の反応をみていると以前は人に飼われていたと思う地元の犬種の川上犬かその雑種に見える。デッキに戻って役場に電話。しかし"8時半に掛けて下さい、担当がまだ居ません。"そりゃそうだ、まだ7時だし今度は地元の人に電話。その人の俊敏な連絡網であっという間に鉄砲打ちの人たち3人が軽トラに乗って登場。彼らが犬の鳴き声のしている森に入って行くその後、谷間に鳴り響く銃声2発。

哀れ、追われ傷つき止め矢を打たれた鹿は軽トラの荷台に乗せられアッという間に集落の方角へ降りて行った、でこの事件は突然終了。余りの手際良さに何の感情も起きる暇もなかったほど。地元の人のハナシではその2匹の野犬は山に消えて行ったらしい。

しかし、このハナシはもうちょっと続きがある。

朝の事件のあと宮(goo)がちょっと目を離したスキに事件現場のほうに行ってしまった。そのまま何事も無く1時間くらい経った時、突然今度は裏山あたりから犬同士のけんかの声がし始めた。焦るカミさんが犬の名前を声を涸らして連呼して斜面を登って行く。自分は作業中だったから犬の喧嘩の声を聞いてなかったけど焦るカミサンの声を聞いて只事ではないと裏山へ走る。木立の向こうからカミさんの"きゃー、もう殺されているかも"との声も聞こえて、喉を涸らして斜面を上へ上へと駆け上る。

ある沢まで来た時、見上げると沢を挟んだ向こうの山に白い犬が見えるその距離約100mくらい、良かった、あの野犬たちに殺されているんじゃないかと思いながら山ん中を駆けてたから木立の中にウチの犬を見つけてカミさんに大声で"居たぞぉ"と叫ぶ。犬に向かって"そこを動くんじゃない"とさけびながら沢を渡って反対側の斜面に取り付いているところで、カミさんもさっき自分が居たところまで追いついて来た。犬に"こっち来い"と叫びながら見上げると、さっきまで大喧嘩していたハズの野犬2匹の後について獣道をスタスタ仲良く一列にならんで上がって行く。こっちの静止の声も届いていないがごとく.....。オーィ一体どうなってるんだ何処行くの?

頭の中では野犬2匹にボコボコにされて群れの一員となって僕らのもとを離れて行ってしまった.....。と毎回のように割と派手な想像をして"もう戻って来ないかもなぁ"と早速オセンチな感情に自分を包んで薪割りのような単純作業に没頭していた。

3時間後、薪を割っていると背中から聞き慣れた首輪についてる鎖の"シャンシャンシャン"という金属音と共に足音と宮(goo)が帰って来た。ハァハァと凄い荒い息で。

前半は事件だったけど後半は犬キチ夫婦の妄想に近い過保護なハナシだった。

小林

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