週末に友人たちとウチの会社のみんなが来ることになっているので一足先にお山に到着。メス犬の宮(goo)は半期に一度の出血サービス中なので遠征が出来ないように繋がれたままでズーッと納得のいかない顔。当然、あの手この手でオス犬が居そうな村の方向へ行こうと、僕らを促す目線がうっとうしいが、それがまた可愛い。
このメス犬の半期に一度の、売り出し期間は約3週間ほど続き、キャンペーンの最後の2〜3日間が特に妊娠し易いみたい。だから、セール始まりより2週間くらいたった後半が特にオス探しに気合いが入る様がひしひしと伝わってくる。
そんな訳で、居たたまれないのか、朝は5時頃からピュイ〜ピュイ〜と鼻を鳴らしながら寝袋の回りを廻って外へ行こうとお誘いがかかる。仕方ないので早朝の山歩きに出るハメに......。
早朝の朝日に照らされる山並みの美しさに言葉を失っているとフト、自分の名前を呼ばれたような気がして見渡してみても誰もいない........目線が前を歩く犬の肛門と交差する、先行して歩くウチの犬のおしりに目を凝らすと肛門の筋肉が時折、喋るように動く、山並みを美しいと言っているのか、確かに何か言葉を発しているかのような肛門の筋肉の達者な動き。凝視しても今イチ何を喋ろうとしているのか解読できない。360°を山に囲まれたここでオシリの穴を使って一体、何を自分に伝えようとしているのか?
日本犬ならではの威勢のいいオシリの穴見せだけど飼い始めの頃は、この丸見えの肛門が犬の事とはいえ、道を行く他人の前では、やや恥ずかしかったりもした。三社祭でフンドシで歩いている粋なお兄さんたちの立ち姿のようでもある。確か、植村直己さんの縦断記でも有名なグリーンランド犬も走りながらウンコを出来るのがグリーンランド犬のいいところだと書いていたような。つまり、ハスキーなどと違ってウンコの度にそりを止めてはいられないから重要な資質だと。
5年くらい前にグリーンランドに行った時イルリサットという小さい町で、その植村さんが縦断に使った犬ぞりと同じタイプの12頭立に乗る機会があった。犬ぞりで2時間ほど雪原を軽い吹雪の中走ったんだけど後続のそりが自分のそりを抜いて行く時に、吹雪いてまわりの見とうしの利かない白いモワモワした視界の中から12頭分の犬たちの息づかいがサラウンドで後方から追いかけてくる。
反響音の無い世界で吹雪で回りは真っ白もの凄い立体音響で、シーツをかぶって遊んだ子供の頃のような感じで音が後から追いかけて来てシーツをかぶるように自分を包んで行く。
そりから落ちないように必死で、前を見据えた自分の視界の隅に12頭の犬たちがゆっくり入ってくる。可愛いけど必死の形相でもあり、音の聞こえ方の面白さが相まって、何故か大笑いが止まらなくなる。
そりは薄い板だけだから、目線も犬たちと同じくらいの高さというのも更にいい。
最初にスタートしたのが自分のそりだったんだけど抜かれる時に大笑いをしてるこちらが悪かったのか気がつくと最後尾になっていた。と、ここで先行の犬たちの何頭かが走りながらの排泄。凄い、やっぱり走りながら出来るんだと、そりの上で大はしゃぎ。
と、ここで朝日に光る山並みにまた視線が戻る。いけない、いけない、先程自分に何か語りかけているように見えた犬の肛門の筋肉の動きに騙されたからか、それとも例の山の魔法か?
また、ひっかかってしまった.....。
小林