06/20/'10 寒くない朝

"森と格闘編"

さて、かくして森は手に入った。

これで、宛も無く出掛けていた山行きに2007年の年頭から行き先が定まった。

前回、書いた通りその森は40年以上放置されたツタが絡まりまくる過密林。
雪は例年は少ないと聞いていたが2007年は年明けから降ったらしく、年が明けて初の森は雪で真っ白。

早速、新年早々にキャンプ仲間5人くらいでまずは-15℃の初耐寒焚き火から森の入り口付近の立ち木の少ないところに炉の場所をを決めて入植記念の初焚き火をした。

森で拾い集めた倒木はどれも腐ったり湿ったりしていて燃やしても煙ばかり、その煙に5人全員巻かれて泣きながら笑ってる。自分たちだけで誰もいない森の端でこんな焚き火がしたくて場所を捜していたようなもの。どんなに寒くたって、なんともあるわけはない。焚き火に当たりながら、脇に置いた飲料はすぐ凍り出すくらい寒かったけどいままでに体験した事の無い開放感があった。

今思うとあの時、村の人が見てたらきっと山火事の心配をして気を揉んでたハズ。今考えると何も判っちゃあいないのに我が物顔で、お恥ずかしい次第です。

恥ずかしがってるばかりではなく、この目の前の過密林を何とかしなくてはいけない。オジイちゃんの狩り場小屋はこんな風ではなかった。そりゃどうでもいいけど一体、過密ったってどの木から伐ればいいのかすら、わからない始末。
白樺と赤松以外はなんて名前の木かも判らない。要するに場所は手に入れて、火も焚いてはみたけどまったく何も知らないことにこうして今更気づく。どこから、どうやって手をつければいいのか?イコールどうしていいのかさっぱりわからなかった....。

判らなければ人頼み。
さっさと樵(きこり)の人を紹介してもらう。地元の人かと思ったら東京生まれの東京育ちの人だった、だからだろうか何にも判らないと素直に告白もできた。そりゃそうでしょうね、判らなくて当たり前ですよとは言ってくれたけど、いい歳しているのに、ちんぷんかんぷん具合に呆れていた事だろう。

彼が言うには木を伐るにも細いのを伐るのか、太いのを伐るか立ち枯れの木は残すのか、伐ってしまうのかどの種類をどの程度伐るのか?その林の目的に応じていろいろな選択肢があるとの事。目の前に伐るべき森があるのにどうしていいかわからない。まぁ、その判らない状況をこれから何年か掛けて少しは判るようになりたいがこちらの希望だからなぁ、選択肢は提示されても選べません...。

まずは、白樺主体の混成林として過密分3割を間引く事に。取捨選択は樵の人に一任。

まいった、まいった何かしなきゃいけないのに何していいか判らないのは子供と同じ、自分の"何もなさ"を痛感。この明らかになった"自分の使えなさ"はなんとなく予想がついていた。だからこういった場所を捜したんだ。"いつまでもこのままじゃいけない"何かを出来るようになりたいというよりこのままでいい歳になっちゃうのはヤバいと思った。

インフラが無い場所での生活の基礎的な作業を自分流でいいから出来るようにならなくてはと居ても立ってもいられない気持ちになって、ワイルドサイドを実感できる場所を見つけた迄はいいけど、やっぱり"自分"はこのワイルドサイドでは全く役立たずだった。

一月後、きこりの人から作業終了の知らせが来た。3人がかりで3日間、のべ9人のプロを動員して3割の立ち木の間引き作業だったらしい。終了確認の為に森へ行ったら膨大な量の伐採された木が森の斜面一面に転がっていた。この目の前一面に転がる丸太がこの後何年かの自分たちの燃料になる。まずは、この大量の丸太をすべて刻んで回収する事から始めなくては.......。

小林

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