08/30/*10 朝21℃

今週は札幌へ行ったり岡山へ行ったりで少し疲れているようなので山へ。

日曜日に東京に居たって死体同然、飯喰ったり電気使ってるから死体よりタチが悪い。だから山で寝ましょう、どうせ寝るんなら。来週は福岡に出張もあるから来れないしやっぱり行っとこうよと言葉巧みにカミさん説得して、ややバテ気味の体を車に積んで来たみた。

4年程前からどうしても登山靴が欲しくて、国内外の革製の重登山靴を見て回ったけど、ピンと来るものになかなか出会えないでいた頃、偶然みつけた日本製の重登山靴。革はスイスのガルサー社、ノルウィージャン製法でクドく縫ってある。2年半ほど気に入って履き倒したけど、その靴を作ってる職人に何とかコンタクトして作ってもらいたかった、ベーシックなデザインの昔ながらの製法で作られた登山靴にレーザーでグラフィックを彫り込んで行くつもりだったのでフライング気味にレザー彫刻機だけはすでに何ヶ月も前に購入済み。革だって既にスイスから仕入れて仕事部屋の隅に積んである。だけど一向に履いている靴の職人に辿り着けない。

生まれも浅草、記憶の1ページ目から寝床の下の階ではトントンと靴が作られていた家だったし父親の友人たち(子供の頃から周りに居たオッサン連中)も皆な革屋か靴コウバの社長だったから、いくら登山靴ってやや方向の違うジャンルでも調べてもアテがつかない靴作る職人なんて想像もできなかった。

そうこうする内にウチのスタッフの捨て身の調査で2年目にやっと連絡先が判明した。早速、都内某所に履いていた靴を持って押し掛けてやっと会えたその人は子供の頃から職人にもっていたイメージとは違うベランメーなタイプじゃない..。
先代からの続く2代目らしく登山はやらないけどスキーは相当の腕前らしいスポーツマンだったからかとベランメーじゃない理由を勝手に見つけながら何とか登山靴を作ってもらいたい一心でいい事ばかりを喋る喋る。
ご本人は先代から続いている登山靴製作を洋服屋の為に作るのは気乗りしないらしく中々進まない話をなんとかサンプルだけでもと強引にねじ込んで帰ってきた。

やっと、辿りついた夢の入り口に嬉しいんだけど一筋縄じゃ行かなさそうな話の行き先にタメ息ついたりで迷惑がられてた経緯があったけどなんとか一回目の製品が出来上がってきたから、やたらに嬉しい。何とか風じゃない正真正銘の本物にやっと触れる事ができた判ってもらえないだろうなぁ、じんわり持ち上がってくるニソニソ笑い。時間が経ってくるとイイ感じになるんだ、この靴。

その靴を持って、卸先の店頭にお客さんたちに来てもらって僕がフィティングをしながらサイズを決めてもらうってのが先週の札幌や来週福岡でやる事。
洋服屋としては教育も受けずアイデアだけでここまで泳いで来たけど靴屋としては18の頃から木型の削り方やフィッティングの要領など一通りの教育を受けてきた。
20人以上の昔からのお馴染みさんの顔や初対面だけど僕らの靴に興味を持ってくれている人たちの足さわりながら紐を結ぶ。紐結びながらこみ上げてくる、グッドバイブみたいなものを感じながら久しぶりに靴屋稼業で暮している気になった。こんな風なら靴屋もいい仕事だったんだなと呟く..。

そんな皆の靴ひも結んだ手でチェーンソウののスターターの紐をひっぱってエンジンを掛ける。今回は2泊できるからゆっくりやりゃあいいんだ。

小林

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