11/15/*14 小暮家

週末に引っ越しのサヨナラ・パーティーがあったので今週末は東京に居る。もちろん僕らの引っ越しではない。

代官山のとある小道の突き当たり。
このドン突きの道に初めて踏み入ったのは19歳の年末。イタリアから帰って何とかファッション業界に潜り込んではみたがシャレた世界には、まだ友達も出来ず、目指そうにもなりたい対象が見えなかった頃。知り合いになったヒカシューというバンドでサックスを吹いていた戸部ちゃんから"知り合いから留守を頼まれている家に年末年始にかけて居るから遊びにおいでよ "と誘われ、住所見ながら探して辿り着いたのがこの道のドン突きにあったモダンな外国人住宅。後に聞けば設計はアントニン・レーモンド事務所だったらしい。

デカいシェパードがいるけど、その面倒だけ見ていれば主人の居ない広〜い邸宅で気楽だよ と彼との電話のやり取りを思い出しながら玄関の扉を開ける、と若い真っ黒なシェパードが襲いかかってくるが なぜかスグにナツくというより気が合った。そして気の合った犬との楽しい数日が過ぎたある日、玄関の扉が開いて見知らぬ顔の男女が入って来た" えーっと、あんたら誰?" と聞いたら" 自分達の家に居るお前こそ誰なの?" と言われたのがその後大変お世話になる小暮夫妻との初対面。

小暮 徹さんは当時すでに売れっ子カメラマン。
小暮秀子さんは料理本作家だけど当時は有名デザイナーで2CVというブランドをやっていた........。そんな流行の最先端な夫婦の家だったとその時初めて知る。

その怪訝な顔してる夫婦に犬の散歩役を買って出たりしながら、何とかこの家に出入りできるようになり紆余曲折ありながらも変わらぬ愛情を注いでもらって現在も自分の中では絶対最上級の夫婦である。書ききれないが大変迷惑も掛け、喰わせてもらい、価値観、美意識などの大幅な入れ替えをこの夫婦のおかげで出来たという事だ。

小暮宅の中は世界中の見た事も無い服や靴、本、家具や雑貨それらが雑然と置かれ,正にメルティング・ポット状態、強烈な光景だった。今日までに至っても洋服のアイデアの源泉は小暮宅のクローゼットで触ったり、袖通したりした記憶が頼り。

思い出深い、この小道の突き当たりの場所も彼らが引っ越したら、もう訪ねる為入って来る事は無いだろうけど19歳の時、持ってるもの何もなく、心細かった時期、この道の奥で大きな自由と知性に触れる事ができた。

そうして僕は光りを得た そう思う。

そんな小道の突き当たり。

(小林)

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