11/23/*10 "井戸を掘る編"

この祝日も仕事上の行事があって東京に居るので"森物語"の続きを。

この森の開拓を始めて暫くは全ての荷物を毎回積み込んで出掛けてたけど、テントを張りっ放しにしてから毎回積み込む荷物がテント分減って、とても楽になった。それでも毎回持って行かなければならなかったのが飲料水。麓のスーパーの水道から貰う事ができないとアウトだから用心の為にポリタンク2つ分の水を東京からわざわざ運んでいた。その水もこの森で初の厳冬期を迎え水は朝になるとポリタンクごと凍る事が判明。朝日に当てたりしながら昼前にならないと液体に戻らない。だから朝起きて飲めるのは寝袋の中に持ち込んでいた水筒の水だけ。連泊の時は水の残量を常に気に掛けていなきゃならなかった、いい経験だったけど毎回の水の運搬にそろそろ終止符をと言う事で井戸を掘ってもらう事にした。

よく飲み水は井戸からですというと "自分で掘ったんですか?"と聞かれるけど掘れるわきゃあない....。地元の人に業者を紹介してもらい作業開始。
15m 掘りました、まだ出水なし。
30m 掘りましたがまだですね。
45m 出て来ないですね。
50m 未だなんですけど、どうします?
どうしますって、どうしようもないじゃない.......。
そのまま掘ってください としかいいようがない。
止めてどうする、50m下に知り合いは居ないから空洞だけあっても使えない。
不安が募って現場に様子を見に行っても地表では地味な作業ばかりでシロウトのこちらにはさっぱりな景色。60m出てきませんねぇ......おかしいなぁ。

このまま水が出て来ないとは不思議と思わなかったけど15mも掘ったら出てくるからと地元の人から聞いていたので、ぼったくられているのかもと東京の仕事場で遠く長野の地面の中に想いを馳せるも何だか現実感がない。しかし、現実には1mあたり3万円(山間部では平地の3倍の料金)づつ課金されて行く。もうすこし掘るとプリウス買えるなぁ,とか100mという事態になったら森が買えたのにとか、猜疑心と不安で頭の中はクルクルしてきた頃のある日"出た出た遂に出たぁ"と監督をお願いした地元の人から連絡が入る。掘った深さ73m...........。もう少し掘ったら温泉でも出るんじゃないかと思うくらいシロウトの耳には深そうな数字だけど,良かった、良かった。でも73mかぁ、深い井戸になったね。


その後、水質検査に出して飲料水として問題なしとお墨付きをもらってポリタンクに水入れる作業とはお別れ。料理やお茶だけじゃなくて乾いた地面に散水してホコリにも対抗できる。高価な水になったけど、やはり水は大切。インフラの無い場所を目指したんだ、仕方ないじゃないか、それより自由に使える水が手に入ったんだ。

僕らより上には誰も棲んでいないから真にキレイな水源なんだ。
水は大切なんだ。そうだろう? どうなんだろう...?
自分らで掘れない以上、仕方ないじゃない、ね。

こうして僕らは、飲料水を手に入れた...............。

(小林)

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