12/13/*10 裏山捜索

川上村は何日か前に降った雪がまだ全体に残ってる薄雪化粧。
いつものようにチェーンソウで薪作りをしてるとカミさんがGPSのモニター上で捕捉してる犬の位置が一時間くらい動かないと知らせてきた。高度は1680mあたりか、何してんだろう?デッキから直線距離で900mとGPSは言っている。救援に行って見るか。もし、足でも折れているなら帰りはアイツを運んで来なきゃならないからと背中に籠を背負って杖を持っちょっと出掛けるつもりで急いで出た。勾配がきつくなってきたところでカミさんを返したんだけどそこで重大なミスをした、水筒はカミさんのパックの中に......。
一人で登り出してGPSの表示に導かれ犬の名前を呼びながら沢や急斜面を登ったり迂回したりして、あと直線距離で200mくらいのところで休む、ポケットに入っていた飴を舐めながら老眼鏡をかけてGPS画面で方向を確認して、ここで初めて水筒を受け取るのを忘れた事に気がついた、でもあと直線で200mだろう、大丈夫なんじゃないかな、たぶん。そのタイミングで東京の友人から電話が鳴る、慌ててる自分をクールダウンさせる為にも休憩のきっかけにと電話に出る。山の中で聞くにはまったく場違いな新製品の話題を聞きながらまたねと電話を切ったら電池が切れた。日没迄あと2時間くらい、飴2ヶだけ雨がひどくなって来た、ちょっと裏山に行くつもりがヤバい事になりそうな気配.......。

たしか民間用GPSの精度は10m、それも開けた空で衛星が4つほど捉えられている場合。今歩いてるいくつもの沢が入り組んでいるような場所は等高線には表示されない事がわかる。森の中には不向きなもの方角を確かめたのに幅10mくらいの崖の上に出てしまってまた下るなんてぇのを繰り返していたら犬の名前呼ぶ声も倒木を乗り越える体力も雪舐めながらの渇きの中ではそろそろ限界、でも1mでも近くに行きたいと食いしばって雪とツララの岩肌を登って行く、滑落したらとか、この装備で雨の中ビパーク出来るんだろうかとか、犬背負って降りるには今来たルートじゃ無理だなとか、いろいろ考えてたらこんどはガスがかかってきた。
あと30mくらいとGPSの表示のところで立ちはだかる崖。両側は深い沢、崖の肌は岩に雪が載って細かいルートが判らないしシャクナゲが邪魔で登れない声出して呼んでみると崖の上から、かすかに犬の声が聞こえる、やっぱり近く迄来ていたんだ。
しかし、もう迂回もできず目の前のこの崖も登れない、目視できるうちに降りなければならないし、散々考えて末一旦帰って出直す事にした。仕方が無いんだ、ごめん。 犬には帰るよ〜とわざと明るく言い残し、断腸の思いで来た道を引き返した。雨の中、朝までアイツは生きているんだろうか?自力で動ける状態なんだろうか?助けてあげれなかった....... 何て事になってるんだ

なんともやりきれない気持ちで雪につく来た時の足跡をトレースしながらデッキに帰った。もう、あの暖かい白い毛に触れないんだなとか朝、もう起こしに来て顔ぺろぺろ舐めたりしないんだなとかベットで横に乗っかられて寝苦しい思いもしないんだろうかとか宮(goo)の事を山ほど考えながら。

その後、いつものように真っ暗になる前に何事もなかったように犬が帰ってきたのは言うまでもない...。(えっ、またなの)

あれで2次遭難してたら一体今頃、大変な騒ぎを起こす所だった...... 裏山こそ恐ろしい。


(小林)

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